＜あらすじ＞
耳をつんざくようなブレーキの悲鳴と激しい衝突音を聞いたあと、どのくらい時間がたったのか。病院の緊急処置室へと駆け込んだ春也は、そこに、たくさんの管につながれた意識不明状態の自分自身を見た。騒がしい室内。ぼう然とたたずむ彼の姿は誰の目にも見えず、声は誰の耳にも届かない。恋人の美智子は眠る春也に語りかける。「だめよ春也、戻ってきてお願い。」―――ふたりで見た色とりどりの夢。野菜市。カレー。古本。温泉。チワワ。ソファー。北海道。シカゴ。何ひとつつ叶わないまま、僕は死んでしまうのか?一体、何があったのか?動けない体となって初めて彼は、これまでの人生を振り返る。父との確執、美智子との出会い、幼なじみたちの笑い声、大好きだったピアノ…。思い出を巡りながら確かめる様々な絆。そしてたどり着いた事故の真相とは。