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2023年アカデミー賞で異例の7冠を獲得した映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』をはじめ、近年の映画や小説、漫画には、多元宇宙(マルチバース)や並行世界を扱ったものが増えている。こうしたSF作品における多元宇宙(マルチバース)とは、宇宙は一つではなく複数存在するという考え方のことで、パラレルワールドのような別の宇宙にもう一人の自分がいるという仮説や、毎日の何気ない選択の繰り返しによって、無数に分岐した別の自分が存在するという仮説に基づく。そこで、『マルチバース宇宙論入門』などの著書を持つ理論物理学者の野村泰紀氏が最新の多元宇宙論、SF作品に描かれているマルチバース世界はあり得るのか、理論的にいかに解釈できるのかについて、できる限り平易に解説する。さらに多元宇宙論がなぜ現代人の抱える実存的苦悩にマッチするのか、という哲学的な思索も深めていく。