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名匠ジャック・リヴェットによる魔術的ファンタジーの世界。
映画に眩暈するこの愉楽の時─

映画を変革させたヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波)の異才ジャック・リヴェット監督による超現実的自由の幻想。

『デュエル』
現代のパリを舞台に、地上での生を受けるため魔法の石をめぐって太陽の女王と月の女王が対決するファンタジー。
リヴェットはジェラール・ド・ネルヴァルの小説に着想を得て、ラブストーリー、犯罪劇、西部劇、ミュージカル・コメディといった内容の＜火の娘たち＞と称した4部作を構想し、本作はその"犯罪劇"にあたる。奇想天外なおとぎ話のような題材を挑戦的なフィルム・ノワールの要素を盛り込んで表現し、詩的な美しさを達成した。決闘者の女ふたりに扮するのはリヴェット映画の常連ジュリエット・ベルトとビュル・オジェ。

『ノロワ』
女海賊モラグは弟の仇を討つために孤島の城を占拠する海賊団のリーダー、ジュリアに復讐を誓う。
『デュエル』と同様、対決するふたりの女性を描く本作は4部作＜火の娘たち＞の2作目である西部劇として作られたが、リヴェットの魔術にかかれば時代やジャンルを問わない作品へと変貌する。ブルターニュ沿岸の12世紀の要塞と17世紀に再建された城といった壮観なロケーションで繰り広げられる物語の中で虚構と現実がぶつかり合い、死の舞踏が振り付けられてゆく。構想された4部作は本作を最後に未完のまま幕を閉じるが、リヴェットが誘う奇妙な酩酊に満ちた世界はその後もさらに深化する。

『メリー・ゴー・ラウンド』
ベンジャミンは元恋人エリザベスから電報を受け取りパリへ向かうが、そこにいたのは彼女の妹レオだった。
ふたりのライバルが『デュエル』『ノロワ』とは異なり今度は男と女になり、謎に支配された舞台で終わることのない追いかけっこが繰り広げられる。レオ役を演じたマリア・シュナイダーやリヴェット自身の個人的な問題により撮影は長引き混乱を極めるも、長編第一作である『パリはわれらのもの』で導入されたテーマを家族間の復讐やパラノイアを絡めメランコリックなミステリーとして見事に再構築した。弁を演じるのはアンディ・ウォーホルに見出された俳優ジョー・ダレッサンドロ。レオとエリザベスの父親には名優モーリス・ガレルが扮している。