＜あらすじ＞
「私、お母さんになりたいの」。そんな思いを抱いていた主人公の晃子だったが、残酷にも妊娠と同時にガンが発覚…。我が子を産むか、母体を優先するか、究極の選択に迫られる。晃子のことを想うが故に母・美津子は出産に反対し、激しい喧嘩に…。晃子が選んだのは「お母さんになる」ということだった。それは反発し、喧嘩をしつつも、そんな母が大好きで、自分もそうなりたいと晃子が強く願ったからであった。美津子は娘のそんな思いを知り、「バカな娘だ」と文句をいいつつ、娘を支えていく。その一方で、妻の出産を止めなかった夫・亮太を許せず、姑と婿の仲はさらに険悪になり、晃子は二人の間を取り持とうと四苦八苦……。そして、無事女の子「ゆりあ」を出産した晃子を待ち受けていたのは余命宣告だった。そこで晃子は、残された時間で「娘への伝言」を残すことに…。「大人だって間違える」「おしゃれは大事よ」──等々、それは少しも説教臭くない、母として、女性の先輩として、これから生きていく娘の背中をそっと押すようなメッセージ。このノートを晃子は本として出版しようと、周囲の反対を聞かず、編集者と二人三脚で、病をおして書き続けた。手が動かないときにはテープに声を吹き込んでまで…。そうまでして、なぜ出版するのか。そこには自分が残していかなければならない娘・ゆりあへの、母親の切なく、深い愛情が──。