＜あらすじ＞
激越な思想家であった土佐藩家老、野中兼山の死後、政敵たちは野中家を絶やすため当時4歳であった婉を含む一族を幽閉した。外界との接触を断たれ、女として人間として生きることのできない閉じられた世界の中で、自由を渇望しながらも婉は兄と共に学問に励んでいた。そんな婉が26歳になったある日、兼山の弟子、谷秦山が一族を訪ねてくる。以降、年に一度、学問上の質疑に限り泰山との文通が許される。それは婉と一族にとって唯一社会に開かれた窓であり、生きる希望となった。そして野中家最後の男、貞四郎の死により、幽居40年目、ついに女たちに赦免が下り、婉は新しい世界へと出て行くが…。