＜商品の情報＞
帝政ロシアを舞台にしたゴーリキーの名作戯曲を、日本の江戸時代の棟割り長屋に暮らす貧しい庶民たちの話しに置き換えた、黒澤明の得意とする骨太な人間ドラマ。
入念なリハーサルを行ない、複数のカメラで一気に撮りあげることで、俳優たちの演技を中断させないという、黒澤監督独特のマルチ・カム方式による演出が頂点を極めた作品として、公開当時絶賛された。それを可能にしたのは、芸達者な俳優をズラリと揃えたキャスティング。黒澤作品に一貫したテーマのひとつである"人間の悲劇性と表裏一体の喜劇性"が、生き生きとした演技の中に溢れている。なかでも山田五十鈴の入魂の演技は、この作品の最大の見所と言える。
また舞台となる長屋のセットは、黒澤映画の美術担当・村木与四郎の執念の作。その出来栄えは日本映画の黄金時代の底力をまざまざと見せつける。『蜘蛛巣城』と『隠し砦の三悪人』の間という、監督・黒澤明の最も油ののりきった時期の作品。「志ん生の落語のような味を出したい」という黒澤が、撮影現場に志ん生師匠を呼んでスタッフに聴かせた、というほほえましいエピソードもある。