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“女”を撮り続けたマックス・オフュルスの傑作。ダニエル・ダリューの妖艶なラブストーリー

不倫というとドギツく重苦しいが、情事・浮気・出来心と呼べばむしろ大人の遊び・もののあわれを思わすような気さえする。オフュルス監督はまさに王朝の色好みの世界に生き、まいど検閲にいためつけられてもなんのその、ひたすらワルツの果てのディープ・キスを美しく撮り続けた人だった。

『たそがれの女心』は彼の執念の最終結晶というべき作品で、第2次世界大戦後の復興もまだまだの時期に、第1次大戦以前にすでに滅びていた社交界の豪華な香りを再現してみせたのはとにかくすごい。しかも情熱と陶酔を演じたら他に並ぶ者のないダリューとボワイエ(くわしくはこのDVDの中で)に名優でもあるデ・シーカがからむとくれば、マトラのカメラも冴えきってしまうのだ。
官能美の理想のようなダリューとボワイエだが、共演したことは意外に少なく、その意味でもこの1本は貴重である。原題の意味は『某夫人(特に名を秘す)』というところ。


原題 MADAME DE…