＜あらすじ＞
夜がまだ明けきらない通りを、少年は大きな袋をかついで歩いていく。麻袋の中の空き缶が歩みにあわせて音をたてる。まるでリズムを刻んでいるように。ここは、ケニアの地方都市ティカ。街でいちばんの早起きは"チョコラ"と呼ばれるストリートで暮らす子どもたちだ。
生きていくために物乞いもする。嘘もつくし、物も盗む。仲間同士助け合ったり、ケンカもする。みんなそれぞれ事情がある。毎日いろんなことがあるけれど、同情なんかいらない。でもあの青空のように、自由な世界がほしい――。
そんな少年たちの気持ちにぴったりと寄り添うのは、『わたしの季節』の監督・小林茂。子どもたちの目線にまで腰を下ろし、キラキラとした彼らの思春期をうつしとる。映画全編に響く不思議な音色は、音楽界の風雲児・サカキマンゴーの奏でる親指ピアノ。
エイズや貧困など過酷な生活環境の中、青空ぐらしの少年たちは、悩みながらも今日も元気にストリートを駆け抜けていく。ナレーションを排し、少年たちの時間で構成された本作は、ドキュメンタリーの枠組みを大きく拡げつつ、人々の生きるエネルギーに溢れている。