＜あらすじ＞
アルゼンチンの軍事独裁政権がようやく終わりを迎えた1983年、政治犯として5年間投獄されていた男･フロレアルが釈放された。妻と息子の待つ家に向かう彼の目の前に、もう死んでしまったはずの友人たちが姿を現し、5年の間に起こった様々な不幸を思い出させる。中でも彼の心に重くのしかかるのは、自分が不在の友人と不貞をはたらいた妻ロシのこと……。 8年間にわたる亡命生活を終えてアルゼンチンに戻ったフェルナンド･E･ソラナス監督が傑作『タンゴ ガルデルの亡命』(85)の後に祖国に戻って撮った復帰第一作。青色を基調とした幻想的な一夜の物語に、監督自身の体験、心情が存分に投影されている。音楽は前作同様、タンゴの革命児アストル･ピアソラが書き下ろした他、名匠アニバル･トロイロの名曲の数々を、名歌手ロベルト･ゴジェネチェがバンドネオン奏者ネストル･マルコリーニを相手に、夜の路上で切々と歌い上げる。