＜商品の情報＞
「誰もが愛されたがっている、でも愛さない」
首都ワルシャワを発った夜行列車を舞台に、メロドラマとスリラーが並走する……。戦後ポーランド映画を代表する名作。

陰鬱で思い詰めた男女や乗客たちの絶妙な心理の綾を、イエジー・カヴァレロヴィッチが緻密な演出で描いた異色作。

1959年ヴェネツィア映画祭ジョルジョ・メリエス賞受賞。

夜行列車の中で自ら経験した出来事を着想源として、イエジー・カヴァレロヴィッチがイエジー・ルトフスキと共同で脚本執筆した1959年公開のポーランド映画。列車内の変化に乏しい密室的・閉所恐怖的空間と、車窓の外に流れ続ける風景を呼び起こす変化に富んだ開放感との対比や、コンパートメントのドアの開閉が生み出すリズムとサスペンス、様々な風景を抱えた乗客たちの人間模様、そうした設定の中で行われる一種の謎解き、といった娯楽映画的要素を持ちながら、映画を支配するのは観客の想像力に訴えかける神秘的で謎めいた雰囲気だ。イエジー・カヴァレロヴィッチ自身が本作を「思いやりへの渇望を描いた」映画だと語るように、過去にとらわれ思い詰めた男女の心理探求に焦点を当て、メロドラマとスリラーを融合させた群像劇の名作である。

＜あらすじ＞
バルド海沿岸保養地ヘルに向かう夜行列車が駅に停車している。どこか落ち着かない様子の男イエジー(レオン・ニェムチク)は、青年スタシェク(ズビグニェフ・ツィブルスキ)にぶつかって詫びた後、列車に乗り込む。新婚カップル、老いた司祭と若い神父、芸術家風の男など、様々な人々が乗り込んでゆく。スタシェクも飛び乗り、別車両の窓から顔を出している若い女マルタ(ルツィーナ・ヴィンニッカ)に手を振る。彼はマルタを追って列車に乗ったらしい。その後イエジーが客室に入るとベッドの上にはマルタがいる。通路では二人の男が、殺人事件について噂話をしている。その事件で妻を殺した犯人は、現在逃走中だという……。