＜あらすじ＞
早熟の天才芸術家として、名を馳せていた李叔同（り・しゅくどう）は、母の死をきっかけに日本への留学を決意する。自身の絵画が入賞を果たした展覧会で、日本人女性・雪子と出会い、強く心を魅かれる叔同。雪子の尽力もあり、彼が創設者のひとりとなった劇団「春柳社」が上演した“椿姫”は成功のうちに幕を閉じ、主演した叔同もまた喝采を浴びるのだった。雪子を妻に迎えた叔同は、卒業を機に帰国。やがて美術と音楽の教師の職を得た彼は、上海に雪子を残したまま任地へと向かった。しかし、先進的な彼の思想や指導方針への風当たりは強く、叔同は次第に空虚な思いに囚われ始める。それは次第に、仏教への傾倒という形へと変容を遂げ、出家を渇望するまでに育ってゆく。僧の妻帯が認められていない中国では、彼の望みが叶うということは、同時に、雪子との別離をも意味していた…。