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連続殺人事件を追う警視庁の捜査をドキュメンタリー・タッチで描いた異色作。丹波哲郎が主演デビュー作を飾った幻の作品でもある。

ジュールス・ダッシンが『裸の町』で試みたドキュメンタリー・タッチの犯罪捜査ドラマを、さらに発展させ、日本映画に移植した先駆的な野心作。この画期的なスタイルの映画に、警視庁、国警本部、科捜研も全面的に後援。オールロケに徹したリアリズム重視の斬新な撮影は、一九五二年当時の東京を生々しく記録した資料としても貴重である。キャストは、セミ・ドキュメンタリー手法を採用した演出意図を汲み、文化座や俳優座所属だった無名俳優を大胆に起用。文化座の丹波哲郎と俳優座の土屋嘉男は、本作で銀幕デビューを飾った。

脚本の構成は、警視庁の法医学技官であった長谷川公之。監督は近年再評価の機運が高まる鈴木英夫。撮影終盤に東宝の『続三等重役』の撮影で、現場を離れたため、脚本を担当した船橋比呂志が残り部分を監督し、共同監督としてクレジットされた。

犯罪捜査の実態を生々しい映像と、当時の犯罪捜査を緻密な考証で克明に描いた早すぎた傑作である。

デジタル・ニューマスター

1952年8月21日公開