＜あらすじ＞
老境を迎えた雨見保江は、孫娘・明美に連れられて息子夫婦の家に向かう途中、まるで引き寄せられるかのように、かつて戦時中に疎開していた館山の古い茅葺きの家を訪れた。そこには、この家の持ち主である女性・光子が、小学生の娘と二人、姿を消した夫を待ちながら暮らしていた。まもなく、詐欺まがいのセールスをして逃げ回っている美土里も現れる…。 海辺の町の、古い茅葺きの家に集った五世代の女性たちは、そこで互いの人生を交差させながら、自分の胸の中の本当の想いを、今一度見つめ直していく。「私のことを忘れないでくれ」。青年士官と交わした少女時代の約束に想いを馳せる保江。今や日本の人口の4分の3が戦争を知らない世代であり、その記憶も徐々に薄れつつある。この想いは世代から世代へと受け継がれ、新しい時代を切り拓いていくことだろう。 「あなたを忘れない」。ここにまたひとつ、忘れられない名作が誕生した――。