＜あらすじ＞
元禄八年・春、阿久利は夫・浅野内匠頭の愛に包まれて幸せな日々を送っていた。しかし、夫との間に子ができないことを心配していた。「お家存続のためなら、養子を取ればすむことじゃ」と笑顔で言う浅野内匠頭だったが、半鐘の音が聞こえると、座に火消装束に身を包み、勇んで飛び出して行った。火事場へ急ぐ内匠頭の何かに取り憑かれた様な表情には、不安を隠せなかった。元禄十三年、筆頭家老の大石内蔵助は阿久利に側室をすすめ紹介する。一目でその娘を気に入った阿久利は、「喜世」と名づけ、躾、行儀作法を教え始める。小間使いとして側に置けば、いずれ内匠頭の心を奪うことだろう。万事上手く進んでいたが…。